４年ぶり通常開催！

夜空と川面を美しく彩る花火と舟山車の競演

　寄居の夏の風物詩として町民をはじめ多くの方々に親しまれている寄居玉淀水天宮祭。国指定史跡であり日本１００名城に選定されている鉢形城跡を背景に打ち上げられる大輪の花火と川面に映る舟山車の競演は「関東一の水祭り」と呼ばれています。
　花火大会は、新型コロナウイルス感染症の影響により令和２年から２度中止となりました。昨年は、新型コロナウイルス感染症の終息の願いを込め「おうちde水天宮祭」と題し、無観客開催でライブ配信を行いました。今年は観覧席を設け、４年ぶりに通常開催します。

日時

８月５日（土）午後７時～９時　※雨天中止

場所

玉淀河原

問い合わせ

寄居玉淀水天宮祭実行委員会事務局（寄居町プロモーション戦略課）
TEL048-581-2121内線431･432
詳しくは町公式ホームページをご覧ください。
https://www.town.yorii.saitama.jp/soshiki/13/suitenguu2023.html

玉淀の歴史と水天宮

　寄居玉淀水天宮祭は、昭和６年８月５日に最初の大祭が挙行されてから、今年で92年を迎えます。この歴史ある祭りは、鉢形城跡北側を流れる荒川の深淵が「玉淀」として命名された記念行事として始められました。今回「玉淀」の歴史と、その歴史の中から生まれた「水天宮」について紐解いてみたいと思います。

玉淀の歴史

　国指定史跡・鉢形城跡の下の川原一帯は、大正の初期までは両岸の樹木がうっそうと茂り、人跡もまれな場所でした。この流れの淀むところに淵があり、深さは１０ｍほどで、青々とし渦を巻いていたといわれています。この淀んだ淵を中心に、上・下流１．５ｋｍくらいの地が現在の「玉淀」になります。当時はこの名称は無く、俗に「城下（しろした）」と呼ばれていました。
　大正から昭和の初期には、当時の市街地を中心に結成された「寄居町青年会」が、荒川の市街地側の沿岸に約６ｍ間隔で５００本ほど桜を植樹しました。この頃はまだ沿岸には道路もなく、桜を見に訪れる人もなかったそうです。
　昭和６年２月、当時の市街地居住の町議会議員を中心に、この桜並木の下一帯、荒川沿岸に遊覧道路を整備する計画が持ち上がりました。早速、市街地各地区の有志の協力を求めるとともに、関係地権者から道路用地を借用し、道路の開さくが始まりました。この道路は、子持瀬坂通り（現在の寄居郵便局南側、子持瀬付近）を起点として正喜橋通り、十一屋公園（現在の雀宮公園）の北裏通りを経て、東武東上線の鉄橋の堤（つつみ）から北上して樋の下坂（現在の玉淀駅南側付近）に至ります。長い通りとなりましたが、その年の桜の花が咲くまでの完成を目指したため、工事期間はわずか４週間ほど、不完全ながらも側溝をつくり、砂利も敷かれました。道路が完成したことにより、この年にお花見ができるという話が町内に広がると、花見客が押しかけ、気の早い商人は小屋がけをして酒やさかな、すしや団子を売る店が十数軒出店し、文字通り花の一大名所となったそうです。

　「玉淀」の名称は、昭和６年４月２９日、埼玉県史跡名勝天然記念物に指定される際、県により命名されました。「玉」は埼玉の玉で美しい、「淀」は水のよどんだ所、すなわち、埼玉県にある美しい玉のような淀んだ地という意味とされています。
　この命名式と同時に「寄居保勝会」（観光協会の前身）が結成され、遊覧道路沿いに小料理店の建築や観光施設の整備が進んでいくこととなります。

水天宮

　寄居保勝会では「玉淀」を世に出すため苦心していました。当時、長瀞では雄大な景勝地と宝登山神社とをタイアップした宣伝を行っていたことから、玉淀も神社を勧請（かんじょう）して祭事を行ってはどうかという話が出たようです。
　そういった中、正喜橋の下流側にある川に面した山林で、石の宮が発見されました。これは俗にいう水神様といって、地元の漁師たちがお祀(まつ)りし、水難除けの神様として信仰していることが分かり、このご神体を迎えて水天宮を祀ることとなります。新しい水天宮社殿は、小谷野権蔵氏と地元名士のご厚意により、石の宮上方の遊覧道路沿いに建築され、ご遷宮(せんぐう)されました。

　この水天宮は、水難除けと安産の神様として広く信仰されており、日本橋の水天宮さまの縁日が毎月「５」の日であることから、最初の大祭は昭和６年８月５日に挙行されました。しばらくは毎年８月５日に大祭が行われておりましたが、その後、８月の第１土曜日に移り、今日まで引き継がれています。

参考資料・寄居町史　通史編